Google Pixel 8 Proを購入しました。
日常にゲームが含まれない人向け
Google Pixel 8 ProはSamsungの協力を得て開発されたGoogle Tensor G3を搭載しています。
Tensor G2から変わらず周回遅れの性能である上にバッテリー持ちを優先した調整がされているため、約16万円という高額製品であるにもかかわらずゲームをまともに動かせません。
その代わり7年間のアップデート保証、リアルタイム翻訳や無料のGoogle One VPNなどゲーム以外の日常生活を便利にしてくれる機能はいくつも用意されています。
個人的には10万円超えのスマホにはオールラウンダーであることを期待するのですが、Googleの考え方とはそりが合わないようです。
このレビューは12GB+128GB版で行っています。
- 翻訳やVPNなどソフト面は便利
- HDR時1330nitの明るいディスプレイ
- フラットディスプレイで端まで見やすい
- 5x望遠カメラ搭載
- ゲームの快適なプレイは不可能
- 同価格帯の8 Gen 2に劣る性能・電力効率
- USB 3.2 Gen 2なのに映像出力に非対応
- 30Wでしか充電できない
Google Pixel 8 Pro | |
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OS | Android 14 |
RAM | 12GB LPDDR5X |
ストレージ | 128GB / 256GB / 512GB UFS 3.1 |
SoC | Google Tensor G3 |
ディスプレイ | 6.7インチ 1344 x 2992 アスペクト比 20:9 120Hzリフレッシュレート OLED |
サイズ | 162.6 x 76.5 x 8.8mm |
重さ | 213g (実測211g) |
SIM | nano SIM + eSIM |
リアカメラ | 50MP + 48MP (超広角) + 48MP (5倍望遠) |
フロントカメラ | 10.5MP |
バッテリー | 5,050mAh |
USB端子 | USB Type-C (USB 3.2 Gen 2) |
目次
説明書、充電ケーブル、データ移行用OTGアダプターなどが付属しています。
ディスプレイ:明るく見やすい
Pixel 8 Proは6.7インチ1344 x 2992解像度のディスプレイを搭載しています。
今回からようやくフラットディスプレイになったため、端の方が反射して見にくくなることはなくなりました。
配列はダイヤモンドピクセルです。
明るさ自動調整オンでの全白HDR動画再生時に輝度をLX-1336Bで計測すると、最大1330nitに達しました。
屋外では高輝度モードが発動し、859nitになることを確認できました。
明るさの度合いを示す単位で、高いほど明るいという意味です。
屋内では400~500nit程度、屋外では800~1000nit程度でないと見にくいとされています。
ちなみに、明るさの自動調整をオンにしないと最大値が制限される機種が多いです。
リフレッシュレートは120Hz対応です。
解像度の変更機能があり、デフォルトだと1008 x 2244になっています。
タッチサンプリングレートをTouch Sample Rate Testerで計測すると、シングルタッチ・マルチタッチともにInput Event Invoke Rateは平均120Hz、Movement Rateは235Hz程度でした。
WALT Latency Timerで計測したタッチ遅延は20.6ms、画面描画遅延は37.3msで合計57.9msでした。
Pixel 7 Proより悪くなっており、性能的にもタッチ遅延的にも音ゲーには不向きです。
画面をタッチしたときに反応してくれるまでの時間です。
この数値が小さいほど、素早く反応するということです。
ゲーミングスマホでは25msほど、通常のスマホでは30~40ms前半が一般的です。
Widevine L1で、Amazonプライムビデオ (ベータ版) などでHD画質でのストリーミング再生ができます。
指紋認証はPixel 7aよりはマシではあるものの、他社と比べると失敗しやすいです。
背面:指紋が付きにくい
背面はマット加工されており、さらさらとしていて指紋汚れなどが付きにくいです。
Bayだと明るい水色という感じで、爽やかな見た目です。
重さは211gです。
カメラ:マクロ撮影は良い
Pixel 8 Proは
- 50MP
- 48MP (超広角)
- 48MP (5倍望遠)
というトリプルカメラ構成です。
フラッシュライトの下には温度センサーが搭載されており、周囲の温度を手軽に測れます。…2年前に搭載されていれば引っ張りだこだったかもしれませんね。
カメラアプリが刷新されており、ついにレンズを自動ではなく手動にすることも可能に。
微妙な距離のときにデジタルズームではなく望遠レンズを使いたい、という場面などで役立ちます。
Display P3で保存できる機能も追加されています。
手持ち撮影した写真はこちらに保存しています。
比較的肉眼と同じような色合いになりやすいものの、全体的に暗い印象になることがあります。
5倍望遠レンズ搭載で遠くのものを綺麗に撮影できます。
ズーム時は近くのものにはピントが合いにくいため、少し離れた位置から物や料理などを撮影する (テレマクロ) 用途には不向きです。
超広角レンズでのマクロ撮影はなかなか優秀で、5cm以上離れた状態でもバッタの毛をはっきり映せるほどです。
夜景モードでは肉眼より全体的に明るめに撮れることは良いものの、明るい部分が白飛びしてしまいやすいです。
スピーカー:迫力に欠ける
Pixel 8 Proは通話用と兼用タイプのステレオスピーカーです。
ボーカルが強めで、低音や高音は控えめなため迫力に欠けます。
音量も小さく、10段階目ぐらいに上げないと聞こえにくいです。
WALT Latency Timerでオーディオ出力遅延を計測すると43.2msでした。
遅延が大きめです。
BluetoothではLDACのほかAAC / aptX / aptX HD / Opusなどに対応しています。
Qualcomm製チップ搭載ではないものの、aptX / aptX HDがAOSPに寄贈されたことで使えるイヤホンの選択肢が広がっています。
ポート:映像出力を意図的に制限
Pixel 8 Proは30Wでの充電にしか対応しておらず、他社の60W以上の充電対応スマホと違って充電を忘れると一日持たせるのが大変になります。
30Wでも発熱は他社の60W以上の充電と大差ないですし、他社は急速充電と寿命を両立する技術を確立しているため、そろそろGoogleも新しい段階に進んでもらいたいです。
USB 3.2 Gen 2ポートを搭載しているにもかかわらずDisplayPort Alt Modeでの映像出力はわざと無効化されています。
root化してUSB-C to Cケーブルを使うことで映像出力の無効化を解除できます。
USB-C to HDMIケーブルだと動作しないようなので修正が進めば将来的なアップデートで有効化される可能性がありそうですが、発売時点で使えるようにして欲しかったです…。
ワイヤレス充電に対応しており、バッテリーシェアで他の機器を充電できます。
モバイルデータ通信にはnano SIMとeSIMを使うタイプで、物理SIMでデュアルSIM運用している方はeSIM対応キャリアに乗り換えないといけなくなってしまいます。
5G mmWave n257に対応しており、上部にアンテナがあります。
電源ボタンと音量ボタンは右側面にあります。
一般的なAndroidスマホとは異なり電源ボタンが上に配置されているため、他社スマホからの乗り換え時には間違って押してしまいやすいです。
性能:価格に釣り合わない性能 (悪い意味で)
Pixel 8 ProはGoogle Tensor G3を搭載しており、G2から変わらずミドルレンジクラスの性能しかありません。
消しゴムマジックやAI壁紙はクラウドベースの機能 (SoC性能と無関係) のため、AI性能に特化したから他が低い性能になったということでも無いようです。
Geekbench 6ではパッケージ名偽装版 (=メーカーの不正ブーストの影響を受けない) でシングルコア1768・マルチコア4507でした。
一応スコア上はSnapdragon 8 Gen 2に近いのですが、電力効率の悪さ・発熱が足を引っ張り実際のゲームでは8 Gen 2に大きく劣るパフォーマンスになります。
背景ぼかしやテキスト処理などで使われる、CPUの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
普段使いの軽い作業にはシングルコア、重たいゲームなどにはマルチコアの性能が重要です。
2023年現在はシングルコアで1200、マルチコアで3000以上なら大抵快適に使えるでしょう。
ベンチマーク結果はこちらの記事にまとめています。
パッケージ名を偽装した3DMarkでのWild Life Extreme Stress Testではスコア2400→1442で、温度上昇は27℃→45℃ (18℃上昇)でバッテリー消費は9%でした。
これはスコア的にはSnapdragon 8 Gen 1に近く、ベストスコアこそ良いものの発熱で落ちた後のスコアはPixel 7 Proから200程度しか上がっておらず、実用的な性能はほぼ進化していないことになります。
Wild Life ExtremeはVulkan APIを利用し、3840×2160解像度のグラフィックでGPU性能を数値化するベンチマークです。
スコアが高いほどゲームなどで滑らかな3D表示が可能で、Stability (安定度) が高いと高い性能を長時間維持できるという意味になります。
発熱とバッテリー消費とのバランスも重要で、安定度が高くて温度上昇とバッテリー消費が少ないものが理想です。
2023年現在は2000以上あれば、大抵のゲームをグラフィック設定を極端に落とすことなく快適にプレイできる傾向にあります。
あくまでもVulkan API使用時の汎用的な簡易指標でしかなく、実際のゲームの挙動は最適化や放熱性能、解像度など様々な要因で変動するため、「このスコアならだいたいこんな動きをするだろう」という推測の材料にする程度に収めてください。
ドキュメント操作など普段使いでのパフォーマンスを計測するPCMark Work 3.0 (パッケージ名偽装版) ではスコア11189でした。
ウェブの閲覧、画像・動画の編集などでの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
高いほど高速な処理ができますがバッテリー消費とのバランスも重要なので、スコアが低めだからといって悪いとは限りません。
2023年現在は8000以上あれば十分です。
UFS 3.1ストレージ、LPDDR5Xメモリを搭載しています。
約16万円のスマホでUFS 4.0ではなくUFS 3.1というのは残念で、実際の速度もUFS 3.1の他社スマホと比べて遅めです。
シーケンシャルリード・ライトは大きなファイルのコピー時や動画エンコード・デコード時などに影響する読み書き速度です。
ランダムリード・ライトは細かなファイルの読み書き速度で、アプリ・ゲーム使用時はこちらの速度が重要です。
原神をパフォーマンスモード・最高画質・60FPS設定・フォンテーヌ (水中→陸上) でプレイしてWeTest PerfDogで計測すると、平均28.7FPSで1FPSあたり154mWの消費電力でした。
WeTest PerfDogは大手メーカーも使うプロ向けツールで、Android 14にもしっかり対応しています。
バッテリー温度は最大40.8℃程度まで上昇しました。
約16万円という高価格に見合わない、ミドルレンジクラスの酷い性能で、電力効率も悪いためバッテリーも減りやすいです。
アプリ起動時に運が悪いと最大5FPSになってしまうことがあり、アプリを再起動しないとまともにプレイできなくなることもありました。
1FPSあたりの消費電力が低いほうが電力効率が良いと言えます。
電力効率が良いとバッテリー消費が少なく、悪いと消費が激しくなってしまいます。
ゲームで電力効率が悪いスマホは他のアプリでもバッテリー消費が大きい傾向にあるため、バッテリーの減りが早いと感じることが多いです。
平均FPS (フレームレート) は、どれほど滑らかな表示を維持できているかを示し、高いほど良いです。
(細かく言うと平均FPSが高く、なおかつ「ジャンク」というちらつきが少ないほど体感の滑らかさが良くなります)
崩壊:スターレイルを最高画質・仙舟「羅浮」で15分プレイすると平均40.7FPSでした。
消費電力はうまく計測できていません。
OS:便利機能多数、ただし下位モデルと大差なし
Pixel 8 Proにはレンズやメッセージアプリなどで使えるリアルタイム翻訳や音声認識して文字起こししてくれる機能、撮影した動画からノイズを消せる音声消しゴムマジック、公衆Wi-Fiなどでの安全性を高めるGoogle One VPNなど便利な機能がいくつも搭載されています。
ただ大半はPixel 7aでも使えるものですし、ソフト機能のためなら別にPixel 8 Proを選ぶ必要性はありません。
新機能はPixel 8 Proのハードウェアだから実現できる、というわけではなく単に旧モデルに利用許可を出していないだけ、というものがほとんどです。
まとめ
- 翻訳やVPNなどソフト面は便利
- HDR時1330nitの明るいディスプレイ
- フラットディスプレイで端まで見やすい
- 5x望遠カメラ搭載
- ゲームの快適なプレイは不可能
- 同価格帯の8 Gen 2に劣る性能・電力効率
- USB 3.2 Gen 2なのに映像出力に非対応
- 30Wでしか充電できない
普段使いでゲームをしない人には良いかもしれませんが、同じかそれ以下の価格で普段使いもゲームも両立できる他社スマホやiPhoneと比べるとコスパは悪いです。
ゲームを軽視する方向性は変わらなさそうですし、私としてはもうGoogleのフラッグシップモデルを買うことはないと思います。
軽い作業しかしない人はPixel 7aで十分で、どうしても大画面や望遠レンズが欲しい方はPixel 8 Proを買うと良いと思います。